とある病院薬剤師が睡眠薬(メラトニン受容体作動薬)の病態、治療についてまとめてみた
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睡眠薬とは
最近では睡眠導入剤とも言われます。
文字通り睡眠を促す薬で、不眠状態や睡眠が必要な状態に使われる薬の総称です。
その構造によって、ベンゾジアゼピン系、シクロピロロン系、バルビツール酸系、チエノジアゼピン系、
抗ヒスタミン薬などに分類されます。
また、作用時間によっても超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分類されます。
以前はバルビツール酸系の薬剤が主に用いられていましたが、
依存しやすいという問題などから現在は比較的安全なベンゾジアゼピン系が多く使われています。
ベンゾジアゼピン系は、脳の興奮を抑制するギャバという神経伝達物質の働きを強めるため、
催眠作用があると考えられています。
使用には、疾患を併せ持つ場合や他の薬剤との併用などは副作用などの恐れもあるため、医師の診断が必要です。
また、最近の睡眠薬は安全性が高くなりましたが、突然中止すると症状が悪化する場合もあります。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬をまとめた記事はこちらです
オレキシン受容体拮抗薬をまとめた記事はこちらです
基本的には薬に頼らない生活習慣が大事ですよ!!
e-ヘルスネットより引用
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-030.html
睡眠障害について
睡眠障害とは
睡眠障害とは昼間は活動して夜間は眠るということができなくなり、日常生活に影響が出ている状態の総称です。
睡眠障害には、不眠症や睡眠関連呼吸障害、中枢性過眠症、概日リズム睡眠・覚醒障害、睡眠時随伴症などが含まれます。
日本人では約5人に1人が睡眠に関して悩んでいるといわれており、女性のほうが多いとされています。
中でも不眠症がもっとも多いといわれています。
原因は種類によって異なりますが、不眠症の多くは加齢が原因になるほか、カフェインの摂取、
寝る前の飲酒や喫煙などの生活習慣が影響する場合もあります。
睡眠障害の治療は種類によって異なり、薬物療法や人工呼吸器の使用、生活習慣の指導などさまざまです。
Medical Note より引用
https://medicalnote.jp/diseases/睡眠障害?utm_campaign=睡眠障害&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
睡眠障害の種類
睡眠障害は大まかに6つの種類に分けることができます。
- 不眠症……眠れないことで日常生活に支障が出る
- 睡眠関連呼吸障害……眠っている間に呼吸に異常が出る
- 睡眠関連運動障害……眠っている間やその前後で体の一部が勝手に動いたり(付随運動)、異常な感覚が出たりする
- 概日リズム睡眠-覚醒障害……体内時計のはたらきがうまくいかなくなることで、望ましいタイミングで眠ったり起きたりできなくなる
- 中枢性過眠症……夜間に十分に眠ったのにもかかわらず、昼間に眠くなり居眠りをしてしまう
- 睡眠時付随症……眠っているのにもかかわらず、異常な行動をする
Medical Note より引用
https://medicalnote.jp/diseases/睡眠障害?utm_campaign=睡眠障害&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
睡眠薬(メラトニン受容体作動薬)
メラトニン受容体作動薬の作用機序
脳の松果体から分泌されるホルモンであるメラトニンは、睡眠や体内時計に深く関わる。
メラトニンは、通常であれば夜に多く分泌され、体温を下げたり体内時計を同調させることなどにより、
脳とからだを睡眠へ誘導する働きをあらわすとされる。
メラトニンはメラトニン受容体(MT1受容体やMT2受容体)に作用することでその働きをあらわす。
本剤はMT1受容体とMT2受容体に作用し、この受容体を刺激し自然に近い生理的睡眠を誘導することで、
睡眠障害(不眠症における入眠困難など)の改善効果をあらわす。
日刊メディカルより引用
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/5625cff65595b38a0b79677d.html
メラトニン受容体作動薬の副作用
- 精神神経系症状
- 眠気、めまい、頭痛などがあらわれる場合がある
- 消化器症状
- 便秘、吐き気などがあらわれる場合がある
- 内分泌症状
- プロラクチンの上昇などがあらわれる場合がある
- 皮膚症状
- 発疹などがあらわれる場合があり、非常に稀だが蕁麻疹や血管浮腫などのアナフィラキシーの症状があらわれる可能性もある
日刊メディカルより引用
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/5625cff65595b38a0b79677d.html
メラトニンとは?
メラトニン(Melatonin, N-acetyl-5-methoxytryptamine)はその大部分が脳内の松果体で産生されるホルモンです。
メラトニンは必須アミノ酸のトリプトファンを原料(基質)として合成されます。
その過程で、セロトニンをN-アセチルセロトニンに変換するN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)の活性が
体内時計と外界の光の両者の調節を受けます。
具体的には、体内時計(視床下部の視交叉上核:しこうさじょうかく)が発振する概日リズムのシグナルは
室傍核(しつぼうかく)、上頸神経節を経て松果体に伝達されてNAT活性を「抑制」します。
体内時計の活動は昼高夜低であるため、結果的に松果体でのメラトニンの産生量、
すなわち血中メラトニン濃度は逆に昼間に低く夜間に高値を示す顕著な日内変動を示します。
NAT活性は外界の光の影響も受けます。
光が瞳孔を通って網膜にあるメラノプシン発現網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive RGC:ipRGC)を刺激すると、
そのシグナルが網膜視床下部路を経て視交叉上核に到達して体内時計を活性化し、
上述の経路を通じてNAT活性を抑制します。
日中は照度が数万〜十数万ルクスもある太陽光のような強い光によってメラトニン分泌量は著しく低下しますが、
夜間であっても明るい人工照明が目に入ることによってメラトニン分泌量は低下します。
例えば家庭照明の数百〜千ルクス程度の照度の光でもメラトニン分泌が抑制されることがあります。
ipRGCは青色光(ブルーライト)に反応しやすく、白色LEDには青色光成分が多く含まれているため、
睡眠や体内時計を乱すのではないかと指摘され、「ブルーライト問題」として有名になりました。
このように、メラトニン分泌は体内時計と環境光の両方から調節を受けています。
多くの生物でメラトニンは生体リズム調節に重要な役割を果たしています。
鳥類での渡りのタイミングや季節性繁殖(メラトニンには性腺萎縮作用があります)などの
季節のリズム、睡眠・覚醒リズムやホルモン分泌リズムなどの概日リズム(サーカディアンリズム)の調整作用があります。
e-ヘルスネットより引用
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-062.html
メラトニン受容体作動薬一覧
メラトベル顆粒小児用0.2%(メラトニン)
<医薬品>
・メラトベル顆粒小児用0.2%:ピーク時間0.33h
<用法及び用量>
・通常、小児にはメラトニンとして1日1回1mgを就寝前に経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日1回4mgを超えないこと。
<併用禁忌薬>
・フルボキサミンマレイン酸塩
<併用注意薬>
・CYP1A2阻害剤
医薬品添付文書より引用
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/620095_1190028D1026_1_06
CYP(薬物代謝酵素)とは?
CYPとは、シトクロムP450(Cytochrome P450)とも呼称され、主には薬物代謝酵素として働き、
身体が取り込んだ薬物を酸化反応により分解し、体外に排出しやすい形にする酵素群の総称です。
類似した機能と構造をした数十種類の酵素の集まりで、
ヒトに投与される薬物の代謝反応の約80%に関与すると言われています。
CYPは主に肝臓に存在して物質の解毒と分解に関与していることが分かっていますが、
肝臓以外にも腎、肺、消化管、副腎、脳、皮膚などほとんどすべての臓器に少量ながら存在することが確認されています。
CYP遺伝子の多型により各種薬物の代謝速度に個人差が現れることが解明されています。
酵素の代謝能力(酵素活性)が低いあるいは失活している場合は薬を服用したときに薬物の血中濃度が必要以上に高くなり、
本来の投与量を守ったとしても副作用が強く出る可能性があります。
一方で、酵素活性が高い場合は薬が治療効果を発揮する前に分解・排出されてしまい、
薬の効き目が悪くなる可能性があります。
薬の効き目が良すぎる、悪い時はCYPのせいかもしれないね!!
ロゼレム(ラメルテオン)
<医薬品>
・ロゼレム:ピーク時間0.75h
<用法及び用量>
・通常、成人にはラメルテオンとして1回8mgを就寝前に経口投与する。
<併用禁忌薬>
・フルボキサミンマレイン酸塩
<併用注意薬>
・CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4阻害剤
医薬品添付文書より引用
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/400256_1190016F1024_1_12
現時点でメラトニン受容体作動薬は大きく分けて2種類になります!!
病院薬剤師としての私の感想
メラトニン受容体作動薬は当院ではロゼレム錠を採用しているのですが
最近の入院患者ではあまり見かけなくなりました。
また、院内処方でも処方しなくなりました。実感だと数%くらい。
特にメラトニン受容体作動薬を処方しなくてもという感覚かなと思います。
そもそも患者さんからしたら寝付きが悪くて睡眠薬を貰いにいくときに
ベンゾジアゼピンだとかメラトニン受容体作動薬だとか関係なく、
寝れれば良いということですよね笑
個人的にはデエビゴ錠2.5mgで十分だと思います。
臨床現場で病院薬剤師として思うこと
若年者、高齢者問わず睡眠薬を服用している人は多くいます。
基本的な考えとしては、何の薬が良いかを尋ねられた時は
医薬品名を答えずに「生活習慣」と答えるようにしています。
不眠という状態を安易に薬という選択肢を取ってしまうと依存します。
私はこの薬がないと眠ることが出来ないと思い込んでいるだけです。
すごい疲れたら自然と眠ります。
朝早起きすれば必ず夜眠くなります。
そういった基本的な生活習慣を見直すことが最終的に不眠を改善する近道だと思っています。
さいごに
生きているうちに病気になることはあると思います。
その際にどのような対処をすれば良いのか不安に思いながら周りに相談をしたり
自身でインターネットで検索して調べる方は多いと思います。
その1つのお助けツールとしてこちらの記事を参考にして頂けたら嬉しいです。