とある病院薬剤師が糖尿病の病態、治療薬の分類についてまとめてみた

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糖尿病治療薬とは

糖尿病の治療薬は、インスリンと経口血糖コントロール薬の2種類に分かれ、

経口血糖コントロール薬としては、スルホニル尿素薬(SU薬)、ビグアナイド、αグルコシダーゼ阻害薬、

速効型インスリン分泌促進薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、

ミトコンドリア機能改善薬、糖尿病治療薬配合薬が用いられている。

masa

基本的には薬に頼らない生活習慣が大事ですよ!!

今日の臨床サポートより引用

https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=3640

糖尿病について

糖尿病とは

糖尿病とは、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖)が慢性的に高くなる病気のことです。

私たちは食事をすると血糖値が上がります。

そして、血糖値の上昇が感知されると膵臓から“インスリン”と呼ばれるホルモンが分泌され、

肝臓や筋肉ではブドウ糖を“グリコーゲン”と呼ばれるエネルギー源に換え、

脂肪組織では“脂肪”として、蓄える仕組みが作動します。

この仕組みが備わっているため、私たちの血糖値は飲食しても一定に保たれているのです。

一方、糖尿病ではインスリンの分泌量が減少したり、インスリンのはたらきが弱くなったりするため、

血糖値が高い状態が続くようになります。

この状態が長期間に及ぶと全身の血管に障害が起こるようになり、

重症化すると失明・腎不全・足の切断などQOL(生活の質)を大きく低減させるような合併症や

心筋梗塞脳梗塞などの病気を引き起こすことがあります。

日本では1,000万人ほどが糖尿病に罹患していると推定されており、注意すべき病気のひとつです。

糖尿病の種類

糖尿病は、その成りたちによっていくつかの種類に分類されますが、大きく分けると

「1型糖尿病」、「2型糖尿病」、「その他の特定の機序、疾患によるもの」、そして「妊娠糖尿病」があります。

1型糖尿病

1型糖尿病では、膵臓からインスリンがほとんど出なくなる(インスリン分泌低下)ことにより血糖値が高くなります。

生きていくために、注射でインスリンを補う治療が必須となります。この状態をインスリン依存状態といいます

2型糖尿病

2型糖尿病は、インスリンが出にくくなったり(インスリン分泌低下)、

インスリンが効きにくくなったり(インスリン抵抗性)することによって血糖値が高くなります。

2型糖尿病となる原因は、遺伝的な影響に加えて、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの環境的な影響があるといわれています。

すべての2型糖尿病患者の方に生活習慣の問題があるわけではありませんが、

血糖値を望ましい範囲にコントロールするためには、食事や運動習慣の見直しがとても重要です。

飲み薬や注射なども必要に応じて利用します。

その他の特定の機序、疾患によるもの

糖尿病以外の病気や、治療薬の影響で血糖値が上昇し、糖尿病を発症することがあります。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めてわかった、まだ糖尿病には至っていない血糖の上昇をいいます。

糖は赤ちゃんの栄養となるので、多すぎても少なすぎても成長に影響を及ぼすことがあります。

そのため、お腹の赤ちゃんに十分な栄養を与えながら、細やかな血糖管理をすることが大切です。

妊娠中は絶えず赤ちゃんに栄養を与えているため、お腹が空いているときの血糖値は、妊娠していないときと比べて低くなります。

一方で、胎盤からでるホルモンの影響でインスリンが効きにくくなり、食後の血糖値は上がりやすくなります。

多くの場合、高い血糖値は出産のあとに戻りますが、妊娠糖尿病を経験した方は将来糖尿病になりやすいといわれています。

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糖尿病薬の分類

スルホニル尿素薬(SU薬)

スルホニル尿素薬膵臓β細胞のSU受容体に結合することで

膵臓からのインスリン分泌を促し血糖値を下げる作用をあらわす。

インスリンは血糖を下げるホルモンであり膵臓のβ細胞から分泌される。

このβ細胞にはスルホニルウレア受容体(SU受容体)というものが存在し、

この受容体がインスリン分泌に関わっている。

スルホニル尿素薬を詳しくまとめて書いた記事はこちらになります

ビグアナイド薬

ビグアナイド薬主に肝臓からの糖の放出を抑える作用のほか、

インスリン抵抗性改善により筋肉や脂肪組織における糖の取り込みを促進させる作用

腸管(小腸)での糖吸収を抑える作用をあらわし、これら複数の作用によって血糖値を改善する。

またビグアナイド薬には、トリグリセリド(中性脂肪)やLDLコレステロールの値を改善する働きなども期待できるとされる。

ビグアナイド薬を詳しくまとめて書いた記事はこちらになります

αグルコシダーゼ阻害薬

αグルコシダーゼ阻害薬はα-グルコシダーゼを阻害する作用により、食後の急激な血糖値の上昇を抑えることで、

糖尿病の合併症の進行を抑える効果などが期待できる。

食物に含まれる糖質(炭水化物)は摂取後、体内で分解されてショ糖(砂糖)などの二糖類になり、

さらにα-グルコシダーゼという酵素によってブドウ糖になり血管へ吸収され血糖値が上昇する。

α-グルコシダーゼを阻害すると、血管への糖の吸収を遅らせることができ、食後の血糖値の上昇が緩やかになる。

日刊メディカルより引用

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82dd.html

α-グルコシダーゼを詳しくまとめて書いた記事はこちらになります

速効型インスリン分泌促進薬

膵β細胞に働きかけてインスリンの分泌を促進する。

作用のメカニズムはSU薬と似ているが、SU薬よりも吸収・分解が速いことが特徴。

主に食後の高血糖対策として用いる。

一般に、服用から約30分後に効果が発現し、約60分後に効果が最大に達し、約4時間後に効果が消失する。

そのため、食事の直前の服薬を遵守する。

糖尿病リソースガイドより引用

https://dm-rg.net/guide/glinide_list

速攻型インスリン分泌促進薬を詳しくまとめて書いた記事はこちらになります

チアゾリジン薬

チアゾリジン薬肥大化した脂肪細胞に作用し小型の脂肪細胞にかえることで、

インスリンへの抵抗を改善、ブドウ糖を取り込みやすくすることで血糖値を下げる作用をあらわす。

また筋肉組織ではグリコーゲンの合成や解糖作用の亢進

TNF-α産生抑制によって糖の取り込みや糖の利用を促進させる。

加えて肝臓における糖の放出抑制作用をあらわし、これらの作用により血糖値を改善する作用をあらわす。

体内の脂肪細胞は肥大化するとインスリンの働きを悪くする物質を出すようになる。

また脂肪細胞が肥大化するとブドウ糖が取り込めなくなる。

肥大化した脂肪細胞を小型の脂肪細胞にすればインスリンの働きを悪くする物質の放出を抑え(インスリン抵抗の改善)、

ブドウ糖を取り込みやすくなる。

筋肉組織ではグリコーゲンの合成や解糖(ブドウ糖を分解する)作用が行われていて、

これを亢進させると血糖が低下しやすくなる。

また筋肉組織におけるTNF-α(サイトカインと呼ばれる体内物質)の産生を抑えると血糖が下がりやすくなる。

日刊メディカルより引用

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82dc.html
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DPP-4阻害薬

DPP-4阻害薬はDPP-4を阻害することによってGLP-1の働きを高め、

血糖が高い時にインスリン分泌を促進することなどによって血糖値を下げる作用をあらわす。

インスリンは血糖値を下げるホルモンであり、膵臓から分泌される。

また体内には食物の摂取後にインスリン分泌を促すインクレチン(GLP-1などの消化管ホルモンの総称)がある。

GLP-1はインクレチンの一つで、体内でDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)という酵素によって分解されるため、

DPP-4を阻害すればGLP-1の作用の減弱を抑えることができる。

日刊メディカルより引用

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82df.html

GLP-1受容体作動薬

GLP-1受容体作動薬GLP-1受容体に対してGLP-1と同じように働き、GLP-1受容体を活性化させ、

血糖に応じて膵臓からインスリン分泌を促すことで、血糖値を下げる。

また体内には食物の摂取後、インスリン分泌を促すインクレチン(GLP-1などの消化管ホルモンの総称)がある。

GLP-1(グルカゴン様ペプチド−1)はインクレチンの一つで、膵臓にはGLP-1が作用するGLP-1受容体があり、

この受容体がGLP-1によって活性化することでインスリン分泌が促される。

日刊メディカルより引用

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82d9.html

SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬腎臓の近位尿細管においてSGLT2を阻害し、

尿としての糖排泄を促進することで血糖値を下げる効果をあらわす。

尿細管で糖の再吸収が阻害されると排泄される尿量(水分量)も増加する。

この作用による本剤の特徴的な副作用の一つに脱水がある。

また尿中の糖濃度が高いため尿路感染症にかかりやすい場合もあり注意が必要となる。

腎臓において尿(原尿)は尿細管という管を通って運ばれる。

尿細管の近位尿細管という部位では尿中に含まれる糖などを血管(血液中)へ運ぶ吸収(再吸収)が行われている。

尿細管から血管内へ糖を運ぶ役割を果たしているのが

SGLT2(ナトリウム・グルコース共役輸送体)という運び屋的な物質である。

このSGLT2の働きを阻害すると血管内への糖の再吸収が阻害され、

尿中に残った糖はそのまま尿として体外へ排泄される。

血管内への糖の吸収が阻害されるため、結果として血液中の糖の量が減る、つまり血糖値が下がる。

日刊メディカルより引用

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82e0.html

ミトコンドリア機能改善薬

ミトコンドリア機能改善薬(イメグリミン)は既存の経口糖尿病治療薬とは異なる構造を有しており、

ミトコンドリアへの作用を介して、グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、

肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制・糖取り込み能改善)の

2つの血糖降下作用を同時に有する新規の経口糖尿病治療薬である。

日刊メディカルより引用

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/202108/571489.html
masa

多くの種類の糖尿病薬があるね!!

病院薬剤師としての私の感想

当院の入院患者は高齢者が多く、かなり高い割合で糖尿病を罹患しています。

上記のように糖尿病には数多くの種類があり、服用方法も様々あります。

例えば、α-グリコシダーゼ阻害薬は腸管で吸収される糖を阻害させる作用があるので

ご飯を食べる前に服用しないと意味がない薬になります。

高齢者は、糖尿病以外にも様々な薬を内服していることが多く、

食後、食前、食間、食直前など服用方法が多くあると、飲み忘れたり、

めんどくさいため、食後に全ての薬を飲んでしまったりすることがあります。

そのため、服用している薬のリスクに合わせて普段食後が基本の薬を

食直前の薬に合わせて食直前の薬にまとめたりします

それは、薬剤師であればお薬手帳や持参薬を見れば経緯がわかると思います。

そのように患者さんの状況を考えて工夫をすることは

今後の患者にとって良い方向に進むことなので

私は積極的におこなっています。

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臨床現場で病院薬剤師として思うこと

若年者、高齢者問わず糖尿病薬を服用している人は多くいます。

基本的な考えとしては、糖尿病予備軍の患者に対して何の薬が良いかを尋ねられた時は

医薬品名を答えずにまずは「生活習慣」と答えるようにしています。

糖尿病という状態を安易に薬という選択肢を取ってしまうと

糖尿病は薬を飲んでいれば大丈夫だと誤解をしてしまい、

生活習慣を改善されずに、薬だけ増えていく患者さんが多いです。

それは本末転倒なので注意して説明していますが

そんなことはどうでも良いと適当に何もせずに薬を渡す薬剤師も存在しているので

注意してくださいね。

さいごに

生きているうちに病気になることはあると思います。

その際にどのような対処をすれば良いのか不安に思いながら周りに相談をしたり

自身でインターネットで検索して調べる方は多いと思います。

その1つのお助けツールとしてこちらの記事を参考にして頂けたら嬉しいです。

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