とある病院薬剤師が分子標的薬のヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)についてわかりやすくまとめてみた

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分子標的薬とは

分子標的薬とは、がん細胞に特異的に発現する特徴を分子や遺伝子レベルで捉えてターゲットとし、

がん細胞の異常な分裂や増殖を抑えることを目的とした治療薬です。

がん細胞の特定の分子だけを狙い撃ちにするので、正常な細胞へのダメージが少なく、

従来の抗がん剤と比べると体への負担も少なくなっています

がんメディカルサービス HP より引用

https://www.g-ms.co.jp/gan-zisyo/bunnsihyouteki/#:~:text=分子標的薬とは、がん細胞に特異,も少なくなっています%E3%80%82
masa

分子標的薬ってどんなものがあるのかな!!

分子標的薬の種類

分子標的薬には「低分子化合物」と「抗体薬」の2種類があります。

(A)抗体薬

特定のタンパク質を標的とするタンパク質を「抗体」と言いますが、抗体を用いた分子標的薬を抗体薬と言います。

抗体薬の作用メカニズムはさまざまで、がん細胞に出現するタンパク質に結合して直接攻撃するタイプもあれば、

がん細胞の周囲の環境に作用するタイプもあります。

(B)低分子化合物

分子標的薬の中でも、有効成分である物質(化合物)が小さいものです。

がん細胞を増殖させるタンパク質を標的にして細胞内に入り込んで結合し、

増殖を促すシグナルを受け取らないよう阻害する作用があります。

こちらは分子標的薬の種類のまとめた記事になります。↓

ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)について

HER2とは(ハーツー)、細胞の増殖に関与するとされるタンパク質のことです。

正常な細胞にもわずかに存在し、細胞の増殖調節能をになっていると考えられていますが、

HER2遺伝子の変異や、HER2タンパク質の過剰発現によって、

活性化することで細胞の増殖制御ができなくなり、がん化します。

HER2は、human epidermal growth factor receptor type2(ヒト上皮細胞増殖因子受容体2)の略語

(human EGF recpter2→HER2)です。

同じような構造と機能をもつタンパクとして、HER1(EGFR)、HER3、HER4と併せてHERファミリーと呼ばれます。

HER2陽性率が高い腫瘍としては、乳がんや胃がんなどがあります。

乳がんでは15~30%、胃がんでは20~25%程度がHER2陽性であるといわれています。

HER2陽性の乳がんは 以前は難治性の乳がんとされていましたが、

HER2に対するモノクローナル抗体のトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)等が導入され、治療成績は大幅に改善されました。

オンコロ HP より引用

https://oncolo.jp/dic/her2

主な副作用

  • 消化器症状
    • 下痢、口内炎、吐き気・嘔吐、胃炎などがあらわれる場合がある
    • 特に下痢は高頻度でおこるとされ、脱水症状などをきたすことがあるので十分注意する
  • 皮膚症状
    • 発疹、痒み、皮膚乾燥、爪の障害、手足症候群などがあらわれる場合がある
  • 心臓障害
    • 頻度は稀だが、狭心症、心室機能不全、動悸などがあらわれる場合がある
  • 間質性肺炎
    • 頻度は非常に稀だが、少し無理をしたりすると息切れする・息苦しくなる、空咳が出る、発熱するなどがみられ、これらの症状が急に現れたり続いたりする
    • 上記のような症状がみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 肝機能障害
    • 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸、発疹、吐き気・嘔吐、痒みなどがみられ症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する

日経メディカル より引用

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/56331c845595b3d40b7966cd.html
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具体的な医薬品

トラスツズマブ(ハーセプチン)

薬価

総称名販売名薬価
ハーセプチン
(中外製薬)
ハーセプチン注射用60
(先発品)
12055円/瓶
ハーセプチン注射用150
(先発品)
27495円/瓶
トラスツズマブBS
(セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン)
トラスツズマブBS点滴静注用60mg「CTH」
(後発品)
5653円/瓶
トラスツズマブBS点滴静注用150mg「CTH」
(後発品)
12907円/瓶
トラスツズマブBS
(日本化薬)
トラスツズマブBS点滴静注用60mg「NK」
(後発品)
5653円/瓶
トラスツズマブBS点滴静注用150mg「NK」
(後発品)
12907円/瓶
トラスツズマブBS
(第一三共)
トラスツズマブBS点滴静注用60mg「第一三共」
(後発品)
5653円/瓶
トラスツズマブBS点滴静注用150mg「第一三共」
(後発品)
12907円/瓶
トラスツズマブBS
(ファイザー)
トラスツズマブBS点滴静注用60mg「ファイザー」
(後発品)
5653円/瓶
トラスツズマブBS点滴静注用150mg「ファイザー」
(後発品)
12907円/瓶

適応疾患

○HER2過剰発現が確認された乳癌
○HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌
○HER2陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌
○がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌

用法用量

HER2過剰発現が確認された乳癌にはA法又はB法を使用する。

HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌には他の抗悪性腫瘍剤との併用でB法を使用する。

HER2陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌にはドセタキセル製剤との併用でB法を使用する。

がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌には

ペルツズマブ(遺伝子組換え)との併用でB法を使用する。

A法

通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には4mg/kg(体重)

2回目以降は2mg/kgを90分以上かけて1週間間隔で点滴静注する。

B法

通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には8mg/kg(体重)

2回目以降は6mg/kgを90分以上かけて3週間間隔で点滴静注する。

なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる

添付文書

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/450045_4291406D5024_1_11

ペルツズマブ(パージェタ)

薬価

総称名販売名薬価
パージェタ
(中外製薬)
パージェタ点滴静注420mg/14mL
(先発品)
206472円/瓶

適応疾患

○HER2陽性の乳癌
○がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌

用法用量

<HER2陽性の乳癌にはトラスツズマブ(遺伝子組換え)と他の抗悪性腫瘍剤との併用>

通常、成人に対して1日1回、ペルツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には840mg

2回目以降は420mgを60分かけて3週間間隔で点滴静注する。

ただし、術前・術後薬物療法の場合には、投与期間は12カ月間までとする。

なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる

<がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌>

トラスツズマブ(遺伝子組換え)との併用において、

通常、成人に対して1日1回、ペルツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には840mg

2回目以降は420mgを60分かけて3週間間隔で点滴静注する。

なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる

添付文書

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/450045_4291424A1020_1_08

トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ)

薬価

総称名販売名薬価
カドサイラ
(中外製薬)
カドサイラ点滴静注用100mg
(先発品)
235820円/瓶
カドサイラ点滴静注用160mg
(先発品)
375077円/瓶

適応疾患

○HER2陽性の手術不能又は再発乳癌
○HER2陽性の乳癌における術後薬物療法

用法用量

通常、成人にはトラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)として1回3.6mg/kg(体重)を3週間間隔で点滴静注する。

ただし、術後薬物療法の場合には、投与回数は14回までとする。

添付文書

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/450045_4291426D1026_1_10

トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)

薬価

称名販売名薬価
エンハーツ
(第一三共)
エンハーツ点滴静注用100mg
(先発品)
160543円/瓶

適応疾患

○ 化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌
○ 化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳癌
○ がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
○ がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌

用法用量

〈化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌、化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳癌、がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除 不能な進行・再発の非小細胞肺癌〉 

通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として

1回5.4mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。

なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる

〈がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌〉 

通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として

1回6.4mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。

なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる

添付文書

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/430574_4291452D1029_1_09

ラパチニブ(タイケルブ)

薬価

総称名販売名薬価
タイケルブ
(ノバルティスファーマ)
タイケルブ錠250mg
(先発品)
1599.7円/錠

適応疾患

HER2過剰発現が確認された手術不能又は再発乳癌

用法用量

通常、成人にはラパチニブとして以下の用量を1日1回、食事の1時間以上前又は食後1時間以降に経口投与する。

なお、患者の状態により適宜減量する。

カペシタビンとの併用:1250mg

アロマターゼ阻害剤との併用:1500mg

添付文書

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300242_4291022F1026_2_05

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臨床現場で病院薬剤師として思うこと

分子標的薬は似たような医薬品が多くわけがわからなくなりますよね。

今回自分自身のためにブログを使ってまとめた節もあるため

現役病院薬剤師としては参考になるかなと思います。

というか、調べるにしても情報がありふれていて

本当に必要な情報が所々にありわかりづらかったということがわかりました。

そのため、今後もこのように重要な医薬品についてはブログにまとめていこうと思います。

さいごに

生きているうちに病気になることはあると思います。

その際にどのような対処をすれば良いのか不安に思いながら周りに相談をしたり

自身でインターネットで検索して調べる方は多いと思います。

その1つのお助けツールとしてこちらの記事を参考にして頂けたら嬉しいです。

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