とある病院薬剤師がMRSA感染症の病態、治療薬についてわかりやすくまとめてみた
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MRSA感染症とは
MRSA感染症とは、“メチシリン”という抗菌薬が効かない黄色ブドウ球菌に感染することによって起こる感染症です。
MRSAとは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の略称です。
黄色ブドウ球菌はヒトの皮膚や鼻の穴の中などに存在し、普段は特に害はありません。
しかし、皮膚や粘膜に傷ができるとそこから感染し、傷が化膿する、赤みや腫れ、痛みなどの症状を引き起こします。
重症化すると発熱などの全身症状がみられることがあるほか、肺炎や敗血症などを引き起こすこともあります。
MRSAは、手術などの治療後に感染することがある代表的な細菌(院内感染型MRSA)です。
しかし、MRSAには異なる遺伝子型もあり、子ども同士の接触が多い保育園や、アメリカンフットボールなど
身体的な接触の多いスポーツなど市中で感染(市中感染型MRSA)することもあれば、
豚などの家畜から感染(家畜関連型MRSA)することもあります。
近年は、医療機関内で発症するMRSA感染症は適切な感染対策により減少傾向にあるといわれています。
MRSAはいわゆる“耐性菌”の1つです。欧米で1960年頃から使用され始めたメチシリンが普及し、
耐性に関係する遺伝子変異を持った黄色ブドウ球菌が病院の環境や医療従事者を介して急速に広まったと考えられています。
現在日本ではメチシリンはほとんど使用されておらず、耐性があるかの判断には使われていません。
代わりに判定にはオキサシリンという抗菌薬が使用されていますが、慣用的に“メチシリン耐性”と呼ばれています。
Medical note より引用
https://medicalnote.jp/diseases/MRSA感染症?utm_campaign=MRSA感染症&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
バンコマイシン等のシミュレーションをして医師に投与量を提案することが病院薬剤師の真骨頂だよ!!
MRSA感染症について
種類
MRSAは、院内感染型MRSA、市中感染型MRSA、家畜関連型MRSAの3つに区分されることがあります。
臨床的には、入院患者から発見されたMRSAを院内感染型MRSA、市中の健康な人から発見されたMRSAを市中感染型MRSAと定義しています。
また、細菌学的にはSCCmecという遺伝子型によって分類することができ、I〜III型を院内感染型MRSA、IV・V型を市中感染型MRSAと定義しています
しかし、近年は入院患者からIV型やV型のMRSAが見つかることも少なくないため、臨床的には区別が難しくなっています。
なお、家畜関連型MRSAは主にIVa・V型に分類され、ほかのMRSAとは異なる遺伝子学的性状を持ちます。
原因
MRSA感染症はMRSAへの感染を原因として発症します。
一般的にMRSAは、ほかの黄色ブドウ球菌と同様に接触感染や飛沫感染によって広がります。
そのため、病気や手術などの治療によって抵抗力が低下している入院患者に感染したり、
市中で子どもや若い人などに感染したりすることがあります。
特に抵抗力が低下している入院患者などに感染した場合には、重症になることがあります。
なお、家畜関連型MRSAは原因菌を保持している動物と人との物理的な接触によって感染することが一般的で、
人から人に感染が広がることはまれであると考えられています。
症状
橋本クリニック HPより引用
https://hashimoto-c.jp/treatment/impetigo-2/mrsa/
院内感染型MRSAによるMRSA感染症
皮膚や粘膜の傷から感染し、初期段階では傷が化膿する、赤みや腫れ、痛みなどの症状が現れることがあります。
MRSAは菌血症(血液中に細菌がいる状態)を起こし、重症の場合は心臓の弁に菌の塊を作って弁を破壊する
心内膜炎という病気を起こすことがあります。
この場合は高熱や血圧低下など現れ、病状が進むと命に関わることもあります。
そのほか、骨や関節に感染して骨髄炎や化膿性関節炎を起こすこともあります。
免疫不全など体の抵抗力が弱くなっている人には肺炎を起こすことがあり、高熱や呼吸困難に陥ることがあります。
下痢症状など腸炎を起こすことはまれです。
市中感染型によるMRSA感染症
通常の黄色ブドウ球菌による感染症と同様に、皮膚の傷などから感染が起こり、傷が化膿する、赤みや腫れ、痛みなどがみられます。
市中感染型MRSAの一部は、白血球を破壊するPVL(Panton-Valentine Leukocidin)と呼ばれる毒素を産生して、
皮膚の下に膿の塊(膿瘍)を作りやすい性質があるため、高病原性*といわれることもあります。
治療によって治癒することがほとんどですが、まれに肺炎を引き起こし命に関わることがあります。
検査・診断
MRSA感染症が疑われる場合、感染の起こっている部位の体液を採取します。
MRSAが検出され、オキサシリンのMIC 値(菌の発育を抑えられる濃度)が4≧μg/mLを示す場合などにMRSAと判定されます。
また、MRSAに特異的な遺伝子を検出するための検査を行うこともあります。
なお、MRSA感染症は感染症法上5類感染症に指定されており、基幹定点医療機関(全国約500か所の病床数300以上の医療機関)が
月単位で届出を行うことになっています。
Medical Note より引用
https://medicalnote.jp/diseases/MRSA感染症?utm_campaign=MRSA感染症&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
MRSA感染症の治療について
MRSA感染症の治療
抗MRSA薬による薬物療法が検討されます。
日本で使用可能な抗MRSA薬には以下が挙げられます。
- グリコペプチド系抗菌薬:バンコマイシン(VCM)・テイコプラニン(TEIC)
- アミノグリコシド系抗菌薬:アルベカシン(ABK)
- オキサゾリジノン系抗菌薬:リネゾリド(LZD)・テジゾリド(TZD)
- 環状リポペプチド系抗菌薬:ダプトマイシン(DAP)
ST合剤、クリンダマイシン(CLDM)、ミノサイクリン(MINO)など、ほかの抗菌薬が有効なこともあるため、感受性検査の結果をもとに治療薬を選択します。
ただし、病態によって使用できる治療薬は決まっているほか、治療薬ごとに副作用なども異なるため、
患者の病態や全身状態などに応じて治療薬を検討します。
また、すでに抗MRSA薬が耐性化・低感受性化しているMRSAも存在することを考え、原因となるMRSAの特徴に応じて治療薬が検討されます。
Medical Note より引用
https://medicalnote.jp/diseases/蜂窩織炎?utm_campaign=蜂窩織炎&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
グリコペプチド系抗菌薬(バンコマイシン(VCM)・テイコプラニン(TEIC))
詳細はこちらの記事から↓
アミノグリコシド系抗菌薬(アルベカシン(ABK))
詳細はこちらの記事から↓
オキサゾリジノン系抗菌薬(リネゾリド(LZD)・テジゾリド(TZD)
詳細はこちらの記事から↓
環状リポペプチド系抗菌薬(ダプトマイシン(DAP))
詳細はこちらの記事から↓
その他(ST合剤、クリンダマイシン(CLDM)、ミノサイクリン(MINO))
詳細はこちらの記事から↓(執筆中)
臨床現場で病院薬剤師として思うこと
病院薬剤師にとってMRSAは切っても切り離せない疾患ですよね。
特に感染症委員会で院内にMRSA患者が発覚したらバタバタし始めます。(私は感染症委員ではない)
また、治療薬に関してはバンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシンは血中濃度のシミュレーションを行わなければならないため
病院薬剤師の真骨頂になります。
投与量のシミュレーションはPCで出来ますが患者の年齢、腎機能、体重、服用薬など
予定通りにいかないことが多々あるので経験値がものを行ってきます。
そこまでの経験が出来れば医師から信頼されてくる状態になりますね。
さいごに
生きているうちに病気になることはあると思います。
その際にどのような対処をすれば良いのか不安に思いながら周りに相談をしたり
自身でインターネットで検索して調べる方は多いと思います。
その1つのお助けツールとしてこちらの記事を参考にして頂けたら嬉しいです。