とある病院薬剤師が低音障害型感音難聴の病態、治療薬についてわかりやすくまとめてみた
クリックできる目次
低音障害型感音難聴とは

低音障害型感音難聴は、突然、低い音だけが聞こえにくくなる疾患です。
同じ感音性難聴である突発性難聴に近い疾患ですが、突発性難聴では低音から高音まですべての音域の聴力が低下することに対し、
低音障害型感音難聴では低音域(主に125Hz、250Hz、500Hz)が低下します。
自覚症状として、「耳がつまった感じ」、「水が入ったままで抜けない感じ」、「低い音の耳鳴り」、「自分の声が響く」を訴えて
受診される方が多いです。
まれにめまいを合併することがありますが、この場合はメニエール病を疑います。
低音障害型感音難聴は、メニエール病と同じく、20~40代の比較的若い女性に多く発症するといわれていましたが、
最近では50~60代、あるいはそれ以上の高齢の方にも増えています。
突発性難聴の詳しい記事はこちら
メニエール病の詳しい記事はこちら
原因
低音障害型感音難聴は、内耳の中でも聴力と関連する蝸牛でリンパ液が過剰となり、水ぶくれが起こることで生じるとされています。
これを内リンパ水腫といいますが、内リンパ水腫が起こると、内耳の栄養血管が圧迫され、内耳の血流不足や神経伝達に障害が起きます。
リンパ液が増加する原因ははっきりとわかっていませんが、体質的なものが大きいと言われています。
ただし、ストレス、睡眠不足、過労、風邪なども誘因となるとされています。
メニエール病も低音障害型感音難聴と同じく、内リンパ水腫が原因とされていますが、蝸牛だけではなく、
平衡感覚と関連する前庭でも内リンパ水腫が起こり、めまいを引き起こします。
症状

低音障害型感音難聴は、ある日、突然、症状が出現します。
「耳がつまった感じがする。」
「耳に水が入ったままで、抜けない感じが続く。」
「ゴー、ジーといった低い音の耳鳴りがする。」
「自分の声が響く。」
「周りの音が二重に聞こえる。響く感じがする。」
「低い声が聞き取りにくい。」
といった症状を訴える方が多いです。
また、日によって症状の強さが違ったり、1日のうちで症状が変動することもあります。
一方で、同じような耳のつまりを起こす疾患は様々あり、耳管狭窄症、耳管開放症、滲出性中耳炎なども鑑別に挙がるため、
いずれに該当するかは聴力検査を行わないと判断がつきません。
麻生耳鼻科咽喉科クリニック HP より引用
https://www.aso-ent.or.jp/symptoms/低音障害型感音難聴|麻生耳鼻咽喉科クリニック/

聴覚障害にも色々な種類があるんだね!!
低音障害型感音難聴の治療について

低音障害型感音難聴は、軽症例では自然治癒する場合もありますが、発症した時点ではそれは判別できません。
そのため、早期の治療開始が重要で、一般的に発症後2週間以内に治療を開始すれば、改善する確率が高いとされています。
治療は薬物療法が中心で、通院での内服治療で改善することがほとんどですが、難聴が高度な場合や難聴が進行する場合、
糖尿病などの合併症をお持ちの場合は入院が必要になることがあります。
【薬物療法について】
漢方薬(柴苓湯、五苓散など):余分な水分を体外に排泄させる
浸透圧利尿剤(イソバイドなど):内耳に貯留しているリンパ液を排出し、むくみを取り除く
血管循環改善薬(アデホスコーワなど):内耳の血流を正常に戻す
まずはこれらの薬剤を併用し、治療を開始しますが、難聴が高度な場合や難聴が進行性の場合はステロイド剤
(プレドニン、リンデロンなど)を併用します。
低音障害型感音難聴の治療薬について

イソソルビド内容液

効能効果
脳腫瘍時の脳圧降下、頭部外傷に起因する脳圧亢進時の脳圧降下、腎・尿管結石時の利尿、緑内障の眼圧降下、メニエール病
作用機序
体内でほとんど代謝を受けないため、濃厚液を大量に投与すると組織中の水分を血液中に移動させる。
腎糸球体で容易にろ過され、糸球体ろ過量(GFR)を増加させる。
尿細管で再吸収されないため、尿細管腔内の浸透圧が上昇し、水の再吸収が抑制される。
その結果、電解質及び水の排泄が増加し、組織中の水分量が減少するため、頭蓋内圧や眼圧が低下する。
用法用量
メニエール病の場合には、1日体重当り1.5~2.0mL/kgを標準用量とし、通常成人1日量90~120mLを毎食後3回に分けて経口投与する。
症状により適宜増減する。必要によって冷水で2倍程度に希釈して経口投与する。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
イソソルビド (セオリアファーマ) | イソソルビド内用液70%「CEO」 (後発品) | 2.6円/mL |
イソソルビド内用液70%分包30mL「CEO」 (後発品★) | 99.7円/包 | |
イソソルビド内用液70%分包40mL「CEO」 (後発品) | 125.8円/包 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/380999_2139001S1079_1_04
メチコバール(メコバラミン)

効能効果
末梢性神経障害
作用機序
メコバラミンは生体内補酵素型ビタミンB12の1種であり、ホモシステインからメチオニンを合成するメチオニン合成酵素の補酵素として働き、
メチル基転位反応に重要な役割を果たす。
用法用量
通常、成人は1日3錠(メコバラミンとして1日1,500μg)を3回に分けて経口投与する。
ただし、年齢及び症状により適宜増減する。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
メチコバール (エーザイ) | メチコバール注射液500μg (先発品) | 96円/管 |
メコバラミン (鶴原製薬) | メコバラミン錠500(ツルハラ) (後発品) | 5.9円/錠 |
メコバラミン (東和薬品) | メコバラミン錠500「トーワ」 (後発品) | 5.9円/錠 |
メコバラミン (ニプロ) | メコバラミン注500μgシリンジ「NP」 (後発品) | 149円/筒 |
メコバラミン (日本ジェネリック) | メコバラミン錠250μg「JG」 (後発品) | 5.9円/錠 |
メコバラミン錠500μg「JG」 (後発品) | 5.9円/錠 | |
メコバラミン (ニプロ) | メコバラミン錠500μg「NP」 (後発品) | 5.9円/錠 |
メコバラミン (ニプロ) | メコバラミン注500μg「NP」 (後発品) | 67円/管 |
メコバラミン (東和薬品) | メコバラミン注射液500μg「トーワ」 (後発品) | 61円/管 |
メコバラミン (辰巳化学) | メコバラミン錠500μg「TCK」 (後発品) | 5.9円/錠 |
メコバラミン (沢井製薬) | メコバラミン錠500μg「SW」 (後発品) | 5.9円/錠 |
メコバラミン (沢井製薬) | メコバラミン錠500μg「SW」 (後発品) | 5.9円/錠 |
メコバラミン (日本ジェネリック) | メコバラミン錠250μg「JG」 (後発品) | 5.9円/錠 |
メコバラミン錠500μg「JG」 (後発品) | 5.9円/錠 | |
メコバラミン (コーアイセイ) | メコバラミン注500μg「イセイ」 (後発品) | 61円/管 |
メコバラミン (キョーリンリメディオ) | メコバラミン錠500μg「杏林」 (後発品) | 5.9円/錠 |
メコバラミン (日新製薬-山形) | メコバラミンカプセル250μg「日新」 (後発品) | 5.9円/カプセル |
メコバラミン (東菱薬品工業) | メコバラミン錠250μg「日医工」 (後発品) | 5.9円/錠 |
メコバラミン錠500μg「日医工」 (後発品) | 5.9円/錠 | |
メコバラミン (陽進堂) | メコバラミン錠500μg「YD」 (後発品) | 5.9円/錠 |
メチコバール (エーザイ) | メチコバール錠250μg (後発品) | 10.4円/錠 |
メチコバール錠500μg (後発品) | 10.4円/錠 | |
メチコバール細粒0.1% (後発品) | 13.4円/包 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/
アデホスコーワ顆粒

効能効果
○下記疾患に伴う諸症状の改善
頭部外傷後遺症
○心不全
○調節性眼精疲労における調節機能の安定化
○消化管機能低下のみられる慢性胃炎
○メニエール病及び内耳障害に基づくめまい
作用機序
ATPはその血行力学的並びに生化学的作用により各組織の代謝を賦活する。
用法用量
〈メニエール病及び内耳障害に基づくめまい〉
メニエール病及び内耳障害に基づくめまいに用いる場合には、1回100mgを1日3回経口投与する。
なお、症状により適宜増減する。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
ATP (アルフレッサファーマ) | ATP腸溶錠20mg「AFP」 | 5.9円/錠 |
アデホス (興和) | アデホスコーワ顆粒10% | 15.5円/g |
アデホス (興和) | アデホスコーワ腸溶錠20 | 5.9円/錠 |
アデホスコーワ腸溶錠60 | 6.9円/錠 | |
アデホス (興和) | アデホスコーワ腸溶錠20 | 5.9円/錠 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/270072_3992001D1059_1_13
臨床現場で病院薬剤師として思うこと

私は突発性難聴を再発も含めて2回経験してきました。
その経緯もあり、そのほかの聴覚障害を同時に調べたことがあり、得た知識を必要としている患者さんのために
まとめたら嬉しいだろうなと思い、今回記事にしてみました。
耳は感覚器官なのでどうしても相手側に理解しづらく、説明することにもストレスがかかり大変ですよね。
そういった環境にならないように今後も病院薬剤師としてSNS等で周知していきたいと思います。
さいごに

生きているうちに病気になることはあると思います。
その際にどのような対処をすれば良いのか不安に思いながら周りに相談をしたり
自身でインターネットで検索して調べる方は多いと思います。
その1つのお助けツールとしてこちらの記事を参考にして頂けたら嬉しいです。