とある病院薬剤師が原発性アルドステロン症の病態、治療薬についてわかりやすくまとめてみた
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原発性アルドステロン症とは

原発性アルドステロン症とは、副腎から“アルドステロン”と呼ばれるホルモンが過剰に分泌されることによって、
高血圧を引き起こす病気です。高血圧症患者の5%程度が、この病気によるものと考えられています。
副腎は左右の腎臓の上に位置する小さな内分泌器官で、血圧の調節、体内の水分や電解質の調節、
ストレス対応などに重要なさまざまなホルモンを分泌しています。

アルドステロンは、体の中のナトリウムやカリウムの量を調節し、水分量や血圧を正常に保つはたらきを持つホルモンです。
健康な状態では、腎臓から分泌される“レニン”と呼ばれる酵素によってアルドステロンの分泌量が調整されますが、
原発性アルドステロン症ではレニンの分泌量と関係なくアルドステロンが過剰に分泌されます。
その結果、体の中のナトリウムと水分量が増加し、高血圧を引き起こします。
治療は、原因や患者の状態により異なりますが、主に手術治療や薬物療法が行われます。
原因
原発性アルドステロン症の原因は、大きく分けて2つあると考えられています。
副腎腫瘍によるもの
副腎に生じた腫瘍が原因となり、アルドステロンが過剰に分泌されます。
原発性アルドステロン症の多くは腫瘍が原因であり、典型的な例では良性腫瘍がみつかりますが、
まれに副腎がんなどの悪性腫瘍がみつかることもあります。
良性腫瘍の原因としては、特定の遺伝子の変異が明らかになりつつあります。
過形成によるもの
過形成とは、副腎内でアルドステロンを分泌する細胞が通常より多くつくられることをいいます。
過形成によりアルドステロンの過剰な分泌が起こりますが、過形成を生じる原因はあまりよく分かっていません。
しかし、血縁者内で複数の患者が生じた場合などでは、特定の遺伝子変異との関連も示唆されています。
症状
原発性アルドステロン症の主な症状は高血圧ですが、高血圧そのものに自覚症状があることはあまりありません。
ただし高血圧状態が長く続くと血管に負荷がかかり、動脈硬化による脳卒中や心不全などの発症へとつながることがあるため、注意が必要です。
そのほか、血液中のカリウム濃度が著しく低くなる低カリウム血症が起こることがあります。
低カリウム血症が生じるのは、原発性アルドステロン症の患者の50%未満といわれており、筋力の低下、だるさ、不整脈、
息苦しさなどの症状がみられます。
検査・診断
主な症状である高血圧には自覚症状があまりないため、健康診断などで高血圧を指摘され、原発性アルドステロン症を疑われることが一般的です。
原発性アルドステロン症が疑われた場合、まずは血液検査が行われます。
その後アルドステロンの分泌の程度を確認するための検査(負荷試験)を行い、診断に至ります。
より正確な診断や治療方法の決定のため、CT検査や副腎静脈サンプリング検査が検討されることもあります。
血液検査
血液検査では、血中のアルドステロンとレニンの量を測定します。
原発性アルドステロン症の場合、アルドステロンの量は多く、レニンの量は少なくなることが特徴です。
アルドステロンとレニンの比が一定の値を越えると、発症が疑われます。
負荷試験
薬剤などを投与しホルモンの反応をみることによって、原発性アルドステロン症の確定診断を行います。
負荷試験にはいくつかの種類があり、入院するなどして専門の医療機関で行うことが一般的です。
CT検査
副腎腫瘍や過形成を確認するために行います。原発性アルドステロン症の原因を明らかにするために行われます。
副腎静脈サンプリング検査
左右の副腎静脈から血液を採取し、左右どちらの副腎からアルドステロンの過剰分泌が生じているのかを確認する検査です。
左右両方で過剰分泌が起こっている場合を両側性、左右どちらか片方で過剰分泌が起こっている場合を片側性といいます。
Medical note より引用
https://medicalnote.jp/diseases/原発性アルドステロン症?utm_campaign=原発性アルドステロン症&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
原発性アルドステロン症の治療について

原発性アルドステロン症の治療方法としては、手術治療、薬物療法などが挙げられます。
左右どちらかの副腎が原因となっている片側性の場合、手術治療を検討することが一般的です。
一方で左右両方の副腎が原因となっている両側性の場合には、手術を行うことはできず、薬物療法を検討することが一般的です。
スピロノラクトン(アルダクトン)

効能効果
〇 高血圧症(本態性、腎性等)
〇 心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、悪性腫瘍に伴う浮腫および腹水、栄養失調性浮腫
〇 原発性アルドステロン症の診断および症状の改善
作用機序
スピロノラクトンは、主として遠位尿細管のアルドステロン依存性ナトリウム-カリウム交換部位にはたらき、
アルドステロン拮抗作用により、ナトリウム及び水の排泄を促進し、カリウムの排泄を抑制する。
用法用量
通常成人1日50~100mgを分割経口投与する。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
アルダクトン (ファイザー) | アルダクトンA細粒10% | 49.1円/g |
アルダクトンA錠25mg (準先発品) | 13.1円/錠 | |
アルダクトンA錠50mg (準先発品) | 27.2円/錠 | |
スピロノラクトン (東和薬品) | スピロノラクトン錠25mg「トーワ」 (後発品) | 5.9円/錠 |
スピロノラクトン (日医工) | スピロノラクトン錠25mg「日医工」 (後発品) | 5.9円/錠 |
スピロノラクトン (長生堂製薬) | スピロノラクトン錠25mg「CH」 (後発品) | 10.4円/錠 |
スピロノラクトン錠50mg「CH」 (後発品) | 7.8円/錠 | |
スピロノラクトン (鶴原製薬) | スピロノラクトン錠25mg「ツルハラ」 (後発品) | 5.9円/錠 |
スピロノラクトン (辰巳化学) | スピロノラクトン錠25mg「TCK」 (後発品) | 5.9円/錠 |
スピロノラクトン (ニプロ) | スピロノラクトン錠25mg「NP」 (後発品) | 5.9円/錠 |
スピロノラクトン (キョーリンリメディオ) | スピロノラクトン錠25mg「杏林」 (後発品) | 5.9円/錠 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/450064_2133001F1620_1_08
エプレレノン(セララ)

効能効果
〈セララ錠25mg・50mg・100mg〉
高血圧症
〈セララ錠25mg・50mg〉
下記の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、β遮断薬、利尿薬等の基礎治療を受けている患者慢性心不全
作用機序
エプレレノンはミネラルコルチコイド受容体に結合し、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)のホルモンである
アルドステロンの結合を阻害する。
アルドステロンは腎などの上皮組織並びに心臓、血管及び脳などの非上皮組織におけるミネラルコルチコイド受容体に結合し、
ナトリウム再吸収及びその他の機序を介して血圧を上昇させる。
これらのアルドステロンの作用を阻害することで降圧作用を発揮するものと考えられる。
また、レニン分泌へのアルドステロンによるネガティブフィードバックを抑制するため、
血漿中レニン活性及び血清中アルドステロン濃度を持続的に上昇させるが、これらの上昇はエプレレノンの作用を減弱しない。
用法用量
〈高血圧症〉
通常、成人には1日1回50mgから投与を開始し、効果不十分な場合は100mgまで増量することができる。
〈慢性心不全〉
通常、成人には1日1回25mgから投与を開始し、血清カリウム値、患者の状態に応じて、投与開始から4週間以降を
目安に1日1回50mgへ増量する。
ただし、中等度の腎機能障害のある患者では、1日1回隔日25mgから投与を開始し、最大用量は1日1回25mgとする。
なお、血清カリウム値、患者の状態に応じて適宜減量又は中断する。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
セララ (ヴィアトリス製薬) | セララ錠25mg (先発品) | 20.6円/錠 |
セララ錠50mg (先発品) | 40.2円/錠 | |
セララ錠100mg (先発品) | 68.1円/錠 | |
エプレレノン (キョーリンリメディオ) | エプレレノン錠25mg「杏林」 (後発品) | 10.9円/錠 |
エプレレノン錠50mg「杏林」 (後発品) | 21.2円/錠 | |
エプレレノン錠100mg「杏林」 (後発品) | 41.4円/錠 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/671450_2149045F1029_4_08
エサキセレノン(ミネブロ)

効能効果
高血圧症
作用機序
エサキセレノンは非ステロイド構造を有するミネラルコルチコイド受容体ブロッカーであり、
核内受容体であるミネラルコルチコイド受容体に選択的に結合し、
レニン-アンジオテンシン系等により生成が促進される副腎皮質ホルモンのアルドステロンによる
ミネラルコルチコイド受容体の活性化を阻害する。
過剰なミネラルコルチコイド受容体の活性化により、尿中ナトリウム及び水分の再吸収の促進などによる血圧上昇が起こり、
心臓、血管、腎臓などの組織障害を促進することが知られている。
エサキセレノンはミネラルコルチコイド受容体の活性化を抑制することで、降圧作用を発揮するものと考えられる。
用法用量
通常、成人には2.5mgを1日1回経口投与する。
なお、効果不十分な場合は、5mgまで増量することができる。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
ミネブロ (第一三共) | ミネブロ錠1.25mg (先発品) | 47.8円/錠 |
ミネブロ錠2.5mg (先発品) | 91.6円/錠 | |
ミネブロ錠5mg (先発品) | 137.4円/錠 | |
ミネブロOD錠1.25mg (先発品) | 47.8円/錠 | |
ミネブロOD錠2.5mg (先発品) | 91.6円/錠 | |
ミネブロOD錠5mg (先発品) | 137.4円/錠 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/430574_2149049F1027_1_09
臨床現場で病院薬剤師として思うこと

原発性アルドステロン症の患者は結果的にみられる機会が少ないので知識の整理をするために
記事をまとめてみました。
臨床的には基礎疾患を確認してからこの疾患ももってるのかと反応する流れが多いかなと思います。
患者さん側からしたらあまり聞きなれない疾患なので不安になる部分も多いと思うので
きちんと説明してあげられるように今後活かしていきたいと思います。
さいごに

生きているうちに病気になることはあると思います。
その際にどのような対処をすれば良いのか不安に思いながら周りに相談をしたり
自身でインターネットで検索して調べる方は多いと思います。
その1つのお助けツールとしてこちらの記事を参考にして頂けたら嬉しいです。