とある病院薬剤師が炭酸脱水素酵素阻害薬(ダイアモックス)についてわかりやすくまとめてみた
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利尿薬について

利尿薬
塩分制限だけでは水分貯留が軽減しない場合、しばしば利尿薬が処方されます。
この種の薬は、作られる尿の量を増やすことで腎臓からの塩分と水分の除去を助け、体全体の水分を減少させます。
フロセミドやトラセミド、ブメタニドなどのループ利尿薬は、心不全に対して最もよく使用される利尿薬です。
これらの利尿薬は通常、長期にわたって服用されますが、緊急時には静脈内投与すると非常に効果的です。
ループ利尿薬は中等度から重度の心不全に適しています。
より効果が穏やかで、血圧を下げる作用もあるサイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジドなど)は、
心不全に加えて高血圧がみられる人などに処方されます。
ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬には、尿中にカリウムを排出させる作用があり、低カリウム血症を引き起こすことがあります。
そのため、カリウムの濃度を上昇させる利尿薬(カリウム保持性利尿薬)や、カリウムのサプリメントと併用することがあります。
心不全のすべての人にとって、スピロノラクトンは望ましいカリウム保持性利尿薬であり、腎機能がひどく低下しない限り使用できます。
この薬は心不全患者の延命に役立ちます。
利尿薬の服用は尿失禁を悪化させる可能性がありますが、通常は、トイレが利用できないときやトイレへのアクセスが不便なときに
失禁のリスクが生じることがないように、利尿薬を使用するタイミングを調整することが可能です。
炭酸脱水素酵素阻害薬とは

炭酸脱水素酵素阻害薬は眼の毛様体中の炭酸脱水酵素の作用を抑制し、眼房水の産生を減少させることで眼圧を下げる作用などをあらわします。
炭酸脱水素酵素とは
私たちが呼吸で吸い込む空気は、細胞内にある糖と脂肪を分解するために燃料を供給してくれる貴重な酸素を含んでいます。
また、肺の中で、酸素(oxygen)は血液中に拡散してヘモグロビン(hemoglobin、今月の分子41番)と結合し、
身体中のあらゆる細胞へと輸送されます。
糖と脂肪が分解されると、副産物として二酸化炭素(carbon dioxide)が細胞で生成されるが、これは身体から除去する必要があり、
そこで再び血液が輸送媒体としての役割を果たします。二酸化炭素は細胞の外へと拡散し、何種類かの方法で血液中を輸送されます。
10%未満は血漿(blood plasma)中に溶けて、約20%はヘモグロビンと結合して輸送されるが、
大半(70%)は炭酸(carbonic acid)に変換されて肺へと輸送されます。
赤血球(red blood cell)中には炭酸脱水酵素(carbonic anhydrase)と呼ばれる酵素があり、
二酸化炭素を炭酸と重炭酸イオン(bicarbonate ion)に変換する作用を助けます。
赤血球が肺に到達すると、同じ酵素が重炭酸イオンを二酸化炭素に戻す変換を助け、できた二酸化炭素は呼吸によって排出されます。
この反応は酵素がなくても起こるが、炭酸脱水酵素は変換速度を100万倍にまで加速することができます。
PDBJ入門 HP より引用
https://numon.pdbj.org/mom/49?l=ja

脱炭酸酵素阻害薬は緑内障の点眼薬としてよく使用されますね!!
炭酸脱水素酵素阻害薬(ダイアモックス)
ダイアモックス(アセタゾラミド)

効能効果
〈ダイアモックス末〉
緑内障、てんかん(他の抗てんかん薬で効果不十分な場合に付加)、肺気腫における呼吸性アシドーシスの改善、心性浮腫、
肝性浮腫、月経前緊張症、メニエル病及びメニエル症候群
〈ダイアモックス錠250mg〉
緑内障、てんかん(他の抗てんかん薬で効果不十分な場合に付加)、肺気腫における呼吸性アシドーシスの改善、心性浮腫、
肝性浮腫、月経前緊張症、メニエル病及びメニエル症候群、睡眠時無呼吸症候群
作用機序
<眼圧低下>
アセタゾラミドは毛様体上皮中に存在する炭酸脱水酵素の作用を抑制することによって房水の産生を減じ、眼圧を低下させるといわれている。
<てんかん発作の抑制>
アセタゾラミドは中枢神経組織内に存在する炭酸脱水酵素を抑制し、脳のCO2濃度を局所的に増大させることにより、
脳の異常な興奮を抑制して、精神神経系の諸症状を緩解すると考えられている。
<呼吸性アシドーシス・睡眠時無呼吸の改善>
アセタゾラミドは炭酸脱水酵素抑制作用により肺胞中のHCO3-の尿中排泄を増加させるとともに、
他方代謝性アシドーシスを起こし、H+を増加させる。増加したH+により呼吸中枢が刺激され、換気量が増大し、
併せて低酸素・炭酸ガス換気応答が改善される。この換気量の増大により血中O2が増加し、CO2は減少し、
呼吸性アシドーシス・無呼吸による睡眠中の低酸素血症が改善する。
また、換気応答の改善により睡眠中の呼吸感受性が維持され、無呼吸の回数が減少する。
<利尿>
アセタゾラミドは腎上皮において炭酸脱水酵素の働きを抑制し、Na+並びにHCO3-の尿細管からの再吸収を抑制することによって
利尿効果をあらわす。その効果は投与後6~12時間持続する。
<月経前緊張症の緩解>
アセタゾラミドによる体内貯留水分の排泄、神経系に対する抑制作用が本症の症状を緩解するといわれている。
<メニエル症候群の改善>
メニエル症候群に対するアセタゾラミドの効果は内耳の局所的リンパ分泌抑制作用、利尿による内耳水腫の除去、
中枢神経系に対する抑制作用等によるといわれている。
用法用量
〈緑内障〉
通常、成人には1日250~1,000mgを分割経口投与する。
〈てんかん(他の抗てんかん薬で効果不十分な場合に付加)〉
通常、成人には1日250~750mgを分割経口投与する。
〈肺気腫における呼吸性アシドーシスの改善、心性浮腫、肝性浮腫〉
通常、成人には1日1回250~500mgを経口投与する。
〈月経前緊張症〉
通常、成人には1日1回125~375mgを月経前5~10日間又は症状が発現した日から経口投与する。
〈メニエル病及びメニエル症候群〉
通常、成人には1日1回250~750mgを経口投与する。
〈睡眠時無呼吸症候群(ダイアモックス錠250mgのみ)〉
通常、成人には1日250~500mgを分割経口投与する。
なお、いずれの場合も、年齢、症状により適宜増減する。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
ダイアモックス (三和化学研究所) | ダイアモックス末 | 85円/g |
ダイアモックス錠250mg | 18.9円/錠 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300297_2134001X1029_3_14
臨床現場で病院薬剤師として思うこと

ここ最近ではアセタゾラミドの錠剤を見る機会が減ってきましたがクリニックを受診されている患者さんは
定期服用薬として持っていることがあります。
また、緑内障の点眼薬として炭水脱水素酵素阻害薬を配合しているエイゾプト懸濁性点眼薬、コソプト配合点眼液などがあります。
さいごに

生きているうちに病気になることはあると思います。
その際にどのような対処をすれば良いのか不安に思いながら周りに相談をしたり
自身でインターネットで検索して調べる方は多いと思います。
その1つのお助けツールとしてこちらの記事を参考にして頂けたら嬉しいです。