とある病院薬剤師が関節リウマチ治療薬であるJAK阻害薬についてわかりやすくまとめてみた
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関節リウマチの治療について

関節リウマチの治療の原則は基礎療法・薬物療法・リハビリテーション・手術療法です。
治療の選択は、病気の重症度・合併症・日常生活の不自由さなどを総合的に判断して行います。
関節リウマチの関節の破壊は、発症して2年以内に急速に進行することが分かっています。
一度破壊された軟骨・骨・関節は元に戻すことができないので、早期診断・早期治療が重要になります。
薬物療法は治療の中心的存在であり、リウマチによる関節の炎症や破壊を抑え、寛解を目指す目的で行われます。
治療薬としてはまず抗リウマチ薬が検討され、薬の効果が不十分な場合に生物学的製剤やJAK(ジャック)阻害薬の使用が検討されます。
第一選択薬は抗リウマチ薬のメトトレキサートですが、間質性肺炎を合併している人などには使用できないため、
その場合には別の抗リウマチ薬が処方されたり、抗リウマチ薬を使用せずに生物学的製剤やJAK阻害薬が処方されたりすることもあります。
生物学的製剤とは生物が産生するたんぱく質などの物質を改良して作られた比較的新しい薬のことです。
現在、関節リウマチの治療薬として使用できる生物学的製剤は8剤あります。
また、JAK阻害薬とは炎症に関わるヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素のはたらきを阻害することで関節リウマチの炎症を抑える治療薬です。
現在、関節リウマチの治療薬として使用できるものは5種類あります。
また、関節の痛みを和らげる目的で非ステロイド性抗炎症薬による補助療法が行われることもあります。
Medical note HP より引用
https://medicalnote.jp/diseases/関節リウマチ?utm_campaign=関節リウマチ&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
関節リウマチについての詳しい記事はこちら
関節リウマチの治療薬について

関節リウマチの治療薬は主に下記の5つようになります。
<関節リウマチの治療薬>
◆ 疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)
◆ 生物学的製剤
◆ JAK阻害薬
◆ 非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)
◆ 副腎皮質ステロイド
JAK阻害薬

関節リウマチは、免疫反応の異常により関節内の滑膜に炎症が起き、関節に痛みや腫れが生じる病気です。
この異常な炎症は、炎症性サイトカインという物質が細胞を刺激することで生じますが、
JAK阻害薬は炎症性サイトカインによる刺激が細胞内に伝達されるときに必要な
JAK(Janus kinase(ヤヌスキナーゼ)の略称)という酵素を阻害する、内服のお薬です。
関節リウマチに対するJAK阻害薬の効果は、生物学的製剤とほぼ同等かそれ以上といわれています。
日本リウマチ学会 HP より引用
https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/jak/
JAK阻害薬
トファシチニブ(ゼルヤンツ)

効能効果
〇既存治療で効果不十分な関節リウマチ
〇中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
作用機序
トファシチニブは、 JAKファミリーの強力な阻害薬であり、 ヒトのキナーゼ群の中で高い選択性を示す。
また、キナーゼアッセイでJAK1、JAK2、JAK3を阻害し、TyK2も軽度に阻害する。
細胞内では2分子のJAKが介在してシグナル伝達が行われるが、トファシチニブはJAK3又はJAK1に会合する
ヘテロ二量体受容体によるシグナル伝達を強力に阻害し、その機能的選択性はJAK2に会合するホモ二量体受容体による
シグナル伝達に対する阻害よりも高い。
JAK1及びJAK3の阻害により、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21を含む数種類の共通のγ鎖を有するサイトカイン受容体を
介したシグナル伝達が遮断される。
これらのサイトカインは、 リンパ球の活性化、増殖及び機能発現に不可欠であることから、
これらのシグナル伝達の阻害により免疫反応を様々な形で抑制できると考えられる。
また、JAK1に対する阻害作用により、 IL-6やⅠ型IFNなど他の炎症誘発性サイトカインを介したシグナル伝達も抑制すると考えられる。
より高用量では、JAK2ホモ二量体シグナル伝達の抑制を介したエリスロポエチンのシグナル伝達の抑制が生じる可能性がある。
用法用量
〈関節リウマチ〉
通常、1回5mgを1日2回経口投与する。
薬価
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/672212_3999034F1020_2_06
バリシチニブ(オルミエント)

効能効果
〇既存治療で効果不十分な下記疾患
関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)アトピー性皮膚炎注)
多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎
〇SARS- CoV- 2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)
〇円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)
作用機序
造血、炎症、免疫機能に関与する各種サイトカインや成長因子が受容体に結合する際にJAKが介在した細胞内シグナル伝達が行われる。
細胞内シグナル伝達経路の中でJAK自体のリン酸化とともに対応するシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)がリン酸化される。
リン酸化されたSTATは核内に移行し、サイトカインに反応する遺伝子群の転写を亢進する。
バリシチニブはJ AK1及びJ AK2活性を阻害し、STATのリン酸化及び活性化を抑制することによりシグナル伝達を阻害する。
用法用量
〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(成人) 、円形脱毛症〉
通常、成人には4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
オルミエント (日本イーライリリー) | オルミエント錠4mg (先発品) | 4820円/錠 |
オルミエント錠2mg (先発品) | 2472.5円/錠 | |
オルミエント錠1mg (先発品) | 1356.8円/錠 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530471_3999043F1020_1_14
ぺフィシチニブ(スマイラフ)

効能効果
既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
作用機序
JAKファミリーは、免疫・炎症反応及び造血等に関与するサイトカインや成長因子の受容体の細胞内領域に会合しており、
受容体下流の細胞内シグナル伝達において重要な役割を担っている。
ペフィシチニブは、JAKファミリーを阻害し、炎症性サイトカインのシグナル伝達や細胞増殖を抑制する。
用法用量
通常、成人には150mgを1日1回食後に経口投与する。なお、患者の状態に応じて100mgを1日1回投与できる。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
スマイラフ (アステラス製薬) | スマイラフ錠50mg (先発品) | 1280.6円/錠 |
スマイラフ錠100mg (先発品) | 2503.8円/錠 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/800126_3999046F1023_1_08
ウパダシチニブ(リンヴォック)

効能効果
既存治療で効果不十分な下記疾患
○関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
○乾癬性関節炎
○X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎
○強直性脊椎炎
○アトピー性皮膚炎注)
○中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
○中等症から重症の活動期クローン病の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
作用機序
ヤヌスキナーゼ(JAK)は炎症応答、造血、及び免疫監視を含む広範囲の細胞プロセスに関与するサイトカイン
または増殖因子シグナルを伝達する重要な細胞内酵素である。
JAKファミリーの酵素には、JAK1、JAK2、JAK3及びTyk2があり、シグナル伝達及び転写活性化因子(STAT)のリン酸化及び活性化に関わる。
JAK1は炎症性サイトカインシグナルにおいて重要であるが、JAK2は赤血球成熟にとって重要であり、
JAK3シグナルは免疫監視及びリンパ球機能において重要な役割を示す。
ウパダシチニブは選択的かつ可逆的にJAKを阻害し、STATリン酸化の阻害を介して炎症性サイトカインのシグナル伝達を抑制する。
用法用量
〈関節リウマチ〉
通常、成人には15mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて7.5mgを1日1回投与することができる。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
リンヴォック (アッヴィ) | リンヴォック錠45mg (先発品) | 8226円/錠 |
リンヴォック錠30mg (先発品) | 6628円/錠 | |
リンヴォック錠15mg (先発品) | 4325.8円/錠 | |
リンヴォック錠7.5mg (先発品) | 2205.4円/錠 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/112130_3999048G2024_1_16
フィルゴチニブ(ジセレカ)

効能効果
○ 既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
○ 中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
作用機序
フィルゴチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)に対する選択的かつ可逆的なアデノシン三リン酸(ATP)競合的阻害剤である。
JAKは、サイトカイン又は成長因子-受容体相互作用から生じるシグナルを細胞膜に伝達し、造血、サイトカインシグナル伝達、
及び免疫細胞機能の細胞プロセスに影響を及ぼす細胞内酵素である。
シグナル伝達経路内で、JAKは遺伝子発現を含む細胞内活性を調節するシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)をリン酸化し、活性化する。
フィルゴチニブはSTATのリン酸化と活性化を阻害することによってシグナル伝達経路を調節する。
用法用量
〈関節リウマチ〉
通常、成人には200mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて100mgを1日1回投与できる。
薬価
総称名 | 販売名 | 薬価 |
---|---|---|
ジセレカ (ギリアド・サイエンシズ) | ジセレカ錠200mg (先発品) | 4159.6円/錠 |
ジセレカ錠100mg (先発品) | 2141.9円/錠 |
添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/230867_3999053F1023_1_04
臨床現場で病院薬剤師として思うこと

私は整形外科・外科病棟の病棟担当薬剤師でもあるので関節リウマチの患者はよく入院されます。
また、関節リウマチ専門の医師もいるため、診断同行させてもらえる際はとても勉強になります。
医薬品については医師、看護師、患者に良質な情報を伝えられるように日々勉強しなければいけないなと
思っています。
関節リウマチの症状としては完全に痛そうですね。。。
さいごに

生きているうちに病気になることはあると思います。
その際にどのような対処をすれば良いのか不安に思いながら周りに相談をしたり
自身でインターネットで検索して調べる方は多いと思います。
その1つのお助けツールとしてこちらの記事を参考にして頂けたら嬉しいです。