とある病院薬剤師がうつ病の病態、治療についてまとめてみた
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うつ病とは
うつ病とは、日常生活に強い影響が出るほどの気分の落ち込みが続いたり、
何事にも意欲や喜びを持ったりすることができなくなる病気です。
社会生活を送るうえで、悲しいことや不快なことへの遭遇を完全に避けることはできません。
そのため、悲しく気分が落ち込む・やる気が起こらないといった状態になることは誰にでもあることです。
一方、うつ病の場合は悲しみの誘因となる出来事がはっきりしなかったり、誘因があったとしても、
通常その出来事に対する心的な反応と予測される状態よりはるかに強い症状が引き起こされたりします。
また、仕事や日常生活に支障をきたすほど強い症状が現れるのもうつ病の特徴です。
うつ病の原因は遺伝、ストレスのかかる出来事、薬の副作用、ホルモン分泌異常などさまざまなものが挙げられ、
日本人の発症率は100人中3~7人とされています。治療の主体は薬物療法ですが、治療に難渋するケースも少なくありません。
Medical noteより引用
https://medicalnote.jp/diseases/うつ病?utm_campaign=うつ病&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
うつ病の症状の経過
通常の症状の経過
うつ病の明確な発症メカニズムは現時点では解明されていません(2020年9月時点)。
しかし、うつ病患者は情動行動を制御する神経伝達物質(神経細胞間の情報伝達に用いられる分子)のなかの
セロトニンやドパミンの機能低下が関与している可能性が示唆されています。
セロトニンは心を落ち着かせ、ドパミンは活動性を高めて楽しみを感じさせるとされています。
また、脳の海馬や前頭葉などの領域で学習機能に重要な“神経栄養因子”が減少していることも示唆されています。
ストレスを受けるとストレスに対処するためにグルココルチコイド(コルチゾール)が分泌されますが、
このホルモンが長期に過剰放出されると神経細胞が傷害されることが知られており、うつ病発症を誘起すると考えられています。
一方、抗うつ薬によってセロトニンやドパミン機能を高めると神経栄養因子の機能が増強し、
うつ病が回復すると考えられています。
また近年では、体の軽度の慢性炎症が脳内の炎症を引き起こすことで発症するメカニズムも想定されています。
うつ病では遺伝的要因も関与するとされますが、うつ病リスクを高める強い効果のある遺伝子多型は同定されていません。
さらに、うつ病は甲状腺機能低下症や更年期障害など体内のホルモンバランスに乱れを引き起こす病気が
要因となって発症することが知られています。
また、ステロイド薬(上記のグルココルチコイドなど)や一種の血圧降下薬、
インターフェロンなどの副作用としてうつ病が生じることもあります。
Medical Note より引用
https://medicalnote.jp/diseases/うつ病?utm_campaign=うつ病&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
うつ病の治療薬
うつ病治療薬分類一覧
三環系抗うつ薬
<作用機序>
抗うつ剤の作用機序は確立されていないが、脳内のセロトニン(5-HT) 及びノルアドレナリン(NA)の
神経終末への取り込み阻害による受容体刺激の増強が抗うつ効果と結びついていると考えられている。
セロトニンとは?
脳内の神経伝達物質のひとつで、ドパミン・ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きをする。
必須アミノ酸トリプトファンから生合成される脳内の神経伝達物質のひとつです。
視床下部や大脳基底核・延髄の縫線核などに高濃度に分布しています。
他の神経伝達物質であるドパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)などの情報をコントロールし、
精神を安定させる働きがあります。
セロトニンが低下すると、これら2つのコントロールが不安定になりバランスを崩すことで、
攻撃性が高まったり、不安やうつ・パニック症(パニック障害)などの精神症状を引き起こすといわれています。
近年、セロトニンの低下の原因に、女性ホルモンの分泌の減少が関係していることが判明し、
更年期障害と関わりがあることが知られるようになりました。
厚生労働省 e-ヘルスネットより
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html#:~:text=セロトニン(せろとにん)&text=脳内の神経伝達,に分布しています%E3%80%82
<医薬品一覧>
・アナフラニール(クロミプラミン塩酸塩)
・アミトリプチン(アミトリプチリン塩酸塩)
・アモキサン(アモキサピン)
・アンプリット(ロフェプラミン塩酸塩)
・イミドール(イミプラミン塩酸塩)
・スルモンチール(トリミプラミンマレイン酸塩)
・トフラニール(イミプラミン塩酸塩)
・トリプタノール(トリプタノール)
・プロチアデン(ドスレピン塩酸塩)
・ノリトレン(ノルトリプチリン塩酸塩)
四環系抗うつ薬
<作用機序>
脳内におけるノルアドレナリンのturnoverを亢進し、シナプス前αアドレナリン受容体を阻害することにより
神経シナプス間隙へのノルアドレナリン放出を促進し、受容体への刺激を増進することによるものと考えられている。
<医薬品>
・テシプール(セチプチリンマレイン酸塩)
・ルジオミール(マプロチリン塩酸塩)
・テトラミド(ミアンセリン塩酸塩)
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
<作用機序>
選択的なセロトニン(5-HT)取り込み阻害作用を示し、神経間隙内の5-HT濃度を上昇させ、
反復経口投与によって5-HT2C受容体のdown-regulationを誘発することにより、
抗うつ作用及び抗不安作用を示すと考えられる。
<医薬品>
・レクサプロ(エスシタロプラムシュウ酸塩)
・ジェイゾロフト(セルトラリン塩酸塩)
・デプロミール(フルボキサミンマレイン酸塩)
・パキシル(パロキセチン塩酸塩水和物)
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
<作用機序>
セロトニン及びノルアドレナリン再取り込みの特異的な阻害であると考えられている。
<医薬品>
・イフェクサー(ベンラファキシン塩酸塩)
・サインバルタ(デュロキセチン塩酸塩)
・トレドミン(ムルナシプラン塩酸塩)
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
<作用機序>
中枢のシナプス前α2アドレナリン自己受容体及びヘテロ受容体に対して拮抗作用を示し、
中枢のセロトニン及びノルアドレナリンの両方の神経伝達を増強する。
ミルタザピンは5-HT2及び5-HT3受容体を阻害するため、セロトニンの神経伝達増大により主に5-HT1受容体が活性化される。
ミルタザピンのS(+)鏡像異性体はα2受容体と5-HT2受容体を主に阻害し、
R(−)鏡像異性体は5-HT3受容体を主に阻害する。
<医薬品>
・リフレックス(ミルタザピン塩酸塩)
SARI(セロトニン遮断再取り込み阻害薬)
<作用機序>
セロトニン(5-HT)再取り込み阻害作用を示し、うつ病患者で低下したセロトニン神経機能を亢進させる。
また、5-HT2受容体遮断作用が比較的強く、うつ病・うつ状態に伴う睡眠障害を改善させる。
<医薬品>
・デシレル(トラゾドン塩酸塩)
S-RIM
<作用機序>
セロトニン再取り込み阻害作用並びにセロトニン受容体調節作用(セロトニン3受容体、セロトニン7受容体及び
セロトニン1D受容体のアンタゴニスト作用、セロトニン1B受容体部分アゴニスト作用、セロトニン1A受容体アゴニスト作用)を有する。
セロトニン再取り込み阻害作用は、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用やドパミン再取り込み阻害作用と比較してより強力である。
<医薬品>
・トリンテリックス(ボルチオキセチン臭化水素酸塩)
臨床現場で病院薬剤師として思うこと
精神科がない中小病院で入院される患者さんの中にも精神領域の病院に通院されている方が一定数います。
その際に日頃みない向精神薬の用量みると焦ります。
この最大用量付近の向精神薬のオンパレードでどうすればと。。。
基本的には定期服用薬を継続で普段通院されている精神領域の病院に任せていますが
患者さんの状態をみているといじりたくなる処方内容があることは事実で
悩みどころでもあります。
1度は精神科領域の病院に勤めて勉強してみたいという気持ちはあるので
そうなった際にどのように取り組むべきかを改めて考えてみたいと思います。
さいごに
生きているうちに病気になることはあると思います。
その際にどのような対処をすれば良いのか不安に思いながら周りに相談をしたり
自身でインターネットで検索して調べる方は多いと思います。
その1つのお助けツールとしてこちらの記事を参考にして頂けたら嬉しいです。